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【セミナー実施レポート】スオミ・ピアノ・スクール -監修者・ピアニスト舘野泉氏を迎えて-

5月9日㈭ 伊藤楽器 船橋イトウミュージックシアターにて、ピアニストの舘野泉先生をお迎えし、久保春代先生による「スオミ・ピアノ・スクール」のセミナーが開催されました。カワイ表参道での2月のセミナーに続き2回目となる今回は、舘野先生の奥様マリア様もご参加されセミナーに耳を傾けてくださいました。



まずは久保先生より、スオミの生まれた国フィンランドの自然と人々についてのお話がありました。一年の半分を厳しい冬に閉ざされるフィンランドの人々は謙虚に自然と向き合い、長く暗い冬をどう乗り切っていくか、物事に対して先を見据えた考え方を持っているとのことです。充実した社会保障もその表れで、スオミ・ピアノ・スクールにも結果を出すことを急がない長い目の教育という考え方が反映されています。

次に久保先生の演奏を交えながらテキストの解説に入りました。

・スオミは子供をまず一人前の人格として扱い、子供の心を大切にしていること。
・子供の感受性、自発性を育むための方法がわかりやすい言葉で示されていること。
・即興演奏や脱力、美しい音、多彩な音色へと導くための奏法、理論、時代ごとの様式などが、入門となる『旅立ち』だけに終わらず、1巻2巻へと繰り返し発展しながら何度も現れ、それらが自然と身につくようになっていること。
・短い曲であっても一曲一曲が芸術性の高い豊かな世界を持っていること。久保先生の美しい音色の演奏によりそれが更に理解できました。
・現代曲、現代奏法も積極的に取り入れていること。

また各巻が進むごとに描かれているイラストのキャラクターも『旅立ち』の巻の《うさぎ》、次の1巻では柔軟、敏捷性、注意深さを増した《ねこ》へ、更に2巻では知性を持った人間に近い《さる》へと進化していきます。子どもはイメージの広がる表情豊かなイラストのキャラクターと共に成長している実感も得られるのではないかと思いました。


『このテキストのねらいは可能な限り広い音楽的な素養を与えながら、音楽に対する興味を目覚めさせ続けていくことにある」これはスオミの原著者の言葉です。
そして監修者舘野泉氏は
『音楽を愛し、子どもたちとともに音楽を生きるという初心こそが望ましい』とおっしゃっています。
どちらも指導者として原点に立ち戻らせてくれるお言葉だと思います。
スオミ・ピアノ・スクールは子どもの指導書でありながら、私達指導者にもその根本的なことに気づかせてくれる素晴らしい教材だと思います。スオミを指導の軸として、私達自身が常に学びながら子供の音楽の世界を広げてあげたいと思いました。


後半は舘野先生と久保先生の対談へと進みました。子供時代の練習についてお尋ねすると、舘野先生の子供時代は草野球や相撲、遊びの時間を楽しみながらも、ピアノの時間になるとごく自然にピアノに向かわれていたそうです。
ご子息バイオリニストのヤンネ舘野氏の子供時代や音楽家への道のりについても話されました。幼いころからバイオリンがお好きだったヤンネ氏は、割りばしをバイオリンに見立て、舘野先生の弾かれるピアノのそばでピアノの曲調に合わせ体を揺らしていたそうです。スタートは早くはなかったそうですが、演奏家としての道のりをヤンネ氏はゆっくり焦らずに基本的なことを諦めず、良いものを身につけながら歩んで来られたと舘野先生はおっしゃっていました。父親として舘野先生は、絵画や建築にも良いセンスを持つヤンネ氏はいずれ何かをつかむだろうと信じ静かに見守っていらっしゃったそうです。
フィンランドの人々の長いスパンで物事に取り組む姿勢、謙虚さ、我慢強さを垣間見た思いでした。

また脱力についてのお話では、高校生時代のコハンスキー先生との出会いが大きな転機となられ、脱力を身に付けてから縛られていた身体も手も楽になり人生が変わったように感じられたとのことです。スオミでも最初から大切にしている脱力ですが「コハンスキー先生に出会った当時も、スオミが出版された頃にも、まだ脱力という言葉は広く知られていませんでした」と舘野先生もおっしゃっていました。


音楽と呼吸の関係についての質問には、作曲家・間宮芳生氏の左手のための作品『風のしるし』の、風=風の神にまつわる神話についてお話をされました。「地上に生きるすべてのものの誕生の時に、風を吹き込み生命を与えてくれるのは風の神だ。人はその体内を風が吹いている間だけ生きている」というアメリカ先住民に伝わる神話があるそうです。
「呼吸することは命であり、音楽の中の呼吸とはこの風と同じ常に意識する大切なことです。ペダルを踏む時、曲の終わりに響きが消えゆく時にも、常に呼吸を感じている。」
とおっしゃいました。音楽の根源に触れる深いお話でした。
そして「ピアノを弾くことは運命的なこと。演奏することが自分の使命である」とおっしゃられた言葉が心に残りました。



最後に舘野先生の演奏でセミナーはしめくくられました。
・月足さおり作曲『雫~しずく~』より「風の彩(いろ)」
・マグヌッソン作曲『アイスランドの風景』より白夜を描写したと言われる
「うららかなひと時、夏至の深夜の煌々と明るい夜に」
・光永浩一郎作曲『サムライ』
心に深く語りかけてくる演奏に会場はしみじみとした感動に包まれました。

セミナー終了後は和食懐石のお店『音波』にて舘野先生、マリア様、久保先生を囲んで和やかにお食事会となりました。


Rep:平尾 かおり

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