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【実施レポ】藤井一興ピアノ研究セミナーvol.6 バッハ平均律・ショパンエチュード全曲シリーズ 調性による色彩とファンタジー4(藤井一興先生)

日時 2018年4月27日(金)
会場 カワイ表参道コンサートサロンパウゼ

1 ハ短調...バッハ平均律BWV847、ショパンエチュードop.10-12
2 変イ長調...バッハ平均律BWV886、ショパンエチュードop.25-1
3 ピュイグ=ロジェ「ピアノのエクササイズ 48の白鍵盤の練習と12のリクレーション」より

ショパンが敬愛していたバッハをどのように取り入れているのか、ショパンの練習曲とバッハ平均律の同じ調の作品を分析していく藤井一興先生のセミナーシリーズ「調性による色彩とファンタジー」、第4回がカワイ表参道にて行われました。

●死を表すハ短調
今回のテーマは死を表すハ短調、愛を表す変ホ長調。まずはハ短調として、バッハ平均律クラヴィーア曲集から、BWV847ハ短調をとりあげます。プレリュードを演奏しながらさまざまに転調していく様子、パイプオルガンの足鍵盤を使ったような響き最後のアレグロの増2度や、ピカルディ終止といった和声についてのお話や、ハーフタッチなどテクニックのことについてお話がありました。
フーガについては教会の中でのステンドグラスを思わせる宗教的な雰囲気について、また技術的なことでは、隣同士の指はリズムがくっついて崩れやすいとか。そのため、普通なら545と弾くのを、あえて535にするなどの工夫もある。なんと貴重なお話でしょうか。
続いてショパンのエチュードでハ短調作品10-12「革命のエチュード」について。アグレッシブなこの曲を藤井先生が弾くと、エネルギーがうねり、はじける波のように表現されていて、バリバリとしていません。いったいなぜ? どのようにすれば? 藤井先生は美しい右手のオクターブで弾くメロディについて、音色は黒鍵の方が情感が出やすいこと、黒鍵と白鍵では親指の触れる面積が違うので、音色が変わること。「ショパンはその音色の変化を見越して作曲してくれている」という興味深いお話に、会場からほーっとため息がこぼれていました。したがって左手も難しいけれど右手も難しい、お言葉に深く納得です。


●愛を表す変ホ長調
変ホ長調の平均律はBWVの886。かなり複雑なプレリュードとフーガですが、藤井先生が弾き始めるとそこは天国のような美しさ。難しさに圧倒され美しい作品であったことを忘れてしまっていて、なんともったいないことをしていたのか、いつも藤井先生のセミナーでは大きな気づきがあります。転調や和声、指づかいについて触れたのち、ショパンエチュードの作品25へ。
ここでは「扇のように」左右対称な動きや、ハーフタッチ、半ペダル・4分の1ペダル・8分の1ペダルの使い分け(!)についての実演もあり、まさに藤井先生の演奏の秘密がどんどん明らかになります。この曲は右の5の指で、ひたすらメロディを浮き立たせますが、「ゴツンと指が当たらないように、に空中で準備をして、指に空気を含ませる」(!)というお話も非常にわかりやすいものでした。藤井先生の演奏を聴いていると、確かに空中で指に空気を含ませると、音がふんわりと柔らかくなるのです。また、場所によっては5でなく4にすることで、右手の外声メロディの音色を変える方法も示されました。具体的で、すぐに真似して試せる非常に貴重なお話がたくさんありました。


●ピュイグ=ロジェ先生の教本に見られる「扇」の音型
後半は、藤井先生がパリで師事したピュイグ=ロジェ先生の「ピアノのエクササイズ  48の発見上の練習と12のレクリエーション」(音楽之友社)の使い方です。藤井先生はこの教本の邦訳と解説を手掛けています。25の1で「扇」という言葉が出てきた直後にこの本を開くと、まさに扇のようなエクササイズがたくさん載っています。休符からはじまる曲が多いのは、息をするため。歯を食いしばって大きな音で練習するのは良くない。フォルテとピアノの両方で練習し、ピアノはかすれないように。ハ長調で書かれているけれども半音あげてもよい。そして1と2の指を輪にする「リングの原則」についても触れられました。
 この「リングの原則」は、最近のアメリカの教本に出てくる「めがね」や「ドーナツ」や「うさぎ指」と通じるものではないかと大変興味深いものでした。藤井先生によると2の指で弾くこと自体に200年の伝統があるといいます。ピアノ以前のチェンバロ時代には2の指が今以上に重要な役割を果たしていたため、そこからの伝統も含まれているのではないかとも推察されます。この点、非常に重要なので、「ピアノのエクササイズ」を熟読・実践したうえで、次回以降にまた詳しく聴ければと感じました。  バッハからショパン、ピュイグ=ロジェ先生から藤井先生へと続くヨーロッパのピアノ音楽の伝統を、美しい演奏とわかりやすいお話で間近に聴ける、宝物のような時間となりました。

藤井先生の「色彩とファンタジー」セミナー、次回は11月30日の予定です。

 
★このセミナーがDVDで販売される予定です。
過去の藤井先生のセミナーDVDも販売しております。
DVDのお申し込み先は ピティナ表参道スマイルステーション三輪宛にメールかお電話にてお問い合わせいただけますようによろしくお願い致します。

◆メールアドレス:olivier.messiaen1908-1992@jcom.home.ne.jp
◆電話:090-5309-2076

藤井 一興(ピアニスト)
ピアノを安川加壽子、井上二葉、辛島輝治、萩原智子、作曲を長谷川良夫、南弘明の各氏に師事。東京芸術大学 3 年在学中、フランス政府給費留学生として渡仏。パリ・コンセルヴァトワールにて作曲科、ピアノ伴奏科ともに一等賞で卒業。パリ、エコール・ノルマルにてピアノ科を高等演奏家資格第一位で卒業。その間、作曲をオリヴィエ・メシアン、ピアノをイヴォンヌ・ロリオ、マリア・クルチォ、ピアノ伴奏をアンリエット・ピュイグ=ロジェの各氏に師事。

1976年 オリヴィエ・メシアン国際コンクール第 2 位( 1 位なし)
1979年 パリのブラジル・ピアノ曲コンクール第 1 位
1980年 クロード・カーン国際コンクール第 1 位
    モンツァ"リサ・サラ・ガロ"国際コンクール第 1 位
    第1回日本国際ピアノ・コンクール第 4 位( 1 位と 3 位なし)
1981年 マリア・カナルス国際コンクール第 2 位( 1 位なし)
    及びスペイン音楽賞
    サンジェルマン・アン・レイエ市
    現代音楽国際ピアノ・コンクール第 1 位
1982年 パロマ・オシェア サンタンデール国際ピアノコンクール入賞
    第 3 回グローバル音楽奨励賞
    第 10 回京都音楽賞実践部門賞

世界各地、日本国内にてリサイタル、室内楽、コンチェルトの他、フランス国営放送局を始めとするヨーロッパ各地の放送局や日本のNHK等で多くの録音、録画など幅広い活動を行っている。 レコード・CDではメシアンのラ・フォヴェットゥ・デ・ジャルダンやイゴール・マルケヴィッチ作品集、武満徹作品集などを続々とリリース。また、作曲家としても、フランス文化省から委嘱を受け、その作品が演奏会や国際フェスティバルで演奏・録音されている。その他、世界初のフォーレのピアノ全集の校訂を担当し、 1 - 5 巻(全 5 巻完結)を春秋社より出版している。
現在、東邦音楽大学大学院大学教授、東邦音楽総合芸術研究所教授、桐朋学園大学特任教授、東京芸術大学講師。

オフィシャルサイト

山本美芽
やまもと・みめ◎音楽ライター、ピアノ教本研究家。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻修了。中学校(音楽)、養護学校にて教諭と勤務したのち、執筆活動をはじめる。ピアノ指導者としても大学在学中から現在までレッスンを行う。「ムジカノーヴァ」「ジャズジャパン」等の音楽専門誌にて、国内外の一流アーティストに多数取材。「もっと知りたいピアノ教本」(大半を執筆、音楽之友社)「21世紀へのチェルニー」(単著、ショパン)などを執筆、ピアノ教本についての研究をライフワークとして続ける。中村菊子「レッスンのハンドブック」の中で一部を取材執筆、呉暁「練習しないで上達する」において文章作成などを担当し、多くのピアノ教本の著者・訳者に直接取材した経験を持つ。  2006年―2010年の間、夫の転勤のためアメリカ・カリフォルニア州在住。カリフォルニア州立シエラカレッジにて単位取得。アメリカのピアノ教本事情を研究。帰国後、2013年より著書「自分の音、聴いてる?」(春秋社)をテーマにしたセミナー、また音楽指導者のためのライティングセミナーを全国各地で行う。音楽教育学の知識と、音楽ライターとしてプロの音楽家・教育者との膨大なインタビュー経験、自分自身のピアノ指導・子育て経験、ピアノ学習、全国のピアノ指導者との密接な交流から得た現場発の問題点など、理論と実践を融合しながらピアノ教育が進むべき道を先導している。  2012年よりピアノを多喜靖美氏に師事。室内楽を多喜靖美、松本裕子の両氏に師事。2015年より「ピアノ教本、かしこく選ぼう」セミナーを全国で行う。あわせて指導者向けの「ライティングセミナー」、参加者が実際に弾き合いながら学ぶ「ひきあいセミナー」なども開催中。オフィシャルサイト http://www.mimeyama.com
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