ご挨拶
今回、羽村ステーション主催のステップは6回目を迎えます。今回から毎年春、4月の開催に変更いたしました。こちらの諸事情によりますことで、申し訳ありません。今後はなるべくこの季節を動かさないように努めます。
ステップに限らず、本番のステージで演奏することは、10回20回のレッスンを受けることにも匹敵するほど生徒さんの進歩と成長を促す効果があることは、ピアノ指導者ならば身に染みて実感することです。それに加えて、ある日ある時ある場所での一回きりの「ナマ演奏」という体験を、生徒さん本人、保護者、お客様と共有することは、何物にも代えがたい大きな喜びです。
「ナマ演奏」を聴くことで共有される体験とはいったい何なのでしょうか?優れた小説家や評論家の表現をいくら読んでもどこかに、微妙な違和感が漂います。デジタル機器が驚異的な進化をして、いつでもどこでもお望み通りの音楽を聴くことができる時代です。ただ、それは「ナマ」ではなくて「デジタル」という加工を施した音楽なのです。知識のため、勉強のためには大いに利用し、娯楽としても楽しめることには大いに感謝したいと思います。お蔭様で現代の私たちは、知識、情報の面ではひと世代前に比べ、格段に豊かになりました。
それでもなお、ひとつの会場で同じ空気を呼吸しながら響いてくるピアノの音色には、言葉にできない何かが感じ取れます。どうぞ、ひとりひとりの演奏をその拙さや幼さをも含めて、まっすぐに受け止めて聴いてあげてください。あなたの好きな音も嫌いな音もあります。心に響く音も、耳をそのまま通過する音もあります。言葉の要らない世界があります。
2015/4/12 PTNA羽村ステーション代表 萬 喜子
(当日のプログラムより)