ご挨拶
出演者のみなさま、本日は表参道パウゼステップに出演下さり、
誠にありがとうございます。またご来場のみなさまにも御礼を申し上げます。
ピリオド楽器による第一回ショパン国際コンクールがワルシャワで開催されました。
ショパンがポーランドで所有していたBuchholtz、パリに出てからのPleyel、Erard、
Broadwoodといった18世紀の楽器で演奏する初めてのショパンコンクールです。
19世紀の演奏のスタイルや表現が、現代のコンサートグランドで奏されるものとは
違ったであろうことは想像できますが、ではそれがどのようなものであったか。。。
それを追求していくのがこのコンクールの意義だったでしょう。
ショパンのBuchholtzは、その後ワルシャワ蜂起で焼失されたため、
復元されたレプリカが使用されました。
ウィーン式のアクションを持ち、ピアノの底板が張られているため、
反響版を閉じれば完全なボックス型になる構造です。
その響きは実に優美で、チェンバロに近い立ち上がりの後にボックス内で残響が混じり、
今までに耳にしたことのないようなやわらかい響きが生まれます。
第1次予選で私が魅了されたのは、まさにその響きでした。
ショパンはBuchholtzを、遺作ポロネーズの数々、
2曲の協奏曲も含めて多数作曲に使っています。
それら遺作ポロネーズのほとんどは、国が消失していた時代に
民衆の民族意識を鼓舞したものです。
今回、特有のノスタルジーやメランコリーの心に染み入る表現を、
このBuchholtzで聴いた時、初めて、やっと、ショパンの若き時代のピアノの響きを
耳にしたと思えたのです。
表参道パウゼステーション代表 楠原祥子
(当日のプログラムより)