2016年1月22日(金)カワイ表参道コンサートサロンパウゼにおいて藤井 一興先生をお招きし、「藤井一興ピアノ研究セミナーVol.1 フランス古典音楽の魅力 現代ピアノで美しい音色を表現する奏法」という題で講座が開催されました。
藤井先生は現在、芸大や桐朋音大にてご教鞭をなさっておられ又オリヴィエ.メシアンの愛弟子でもあられた世界的ピアニストです。 この度はお忙しいお時間を工面して下さり、 ピアノを愛する多くの方々に広く門戸を開いて ピアノ研究会を開講して下さりました。
今回はバロック時代に古楽器で演奏されていた曲のレパートリーを現代のモダンピアノで適切に演奏するにはどの様な奏法が相応しいのかというテーマで、多くのサンプル曲を弾いて下さりながら様々なテクニックを御教授下さりました。
鍵盤を5ミリ沈ませた所から撫でる摩る...しなやかで美しい指の動きによる極上なレガート。 雅やかな装飾音の音色を創る多彩なテクニックに魅了され更に素晴らしいペダリングテクニックに圧倒され...あっという間の2時間。
それは正にピアノの職人技。 誠に感動的で分かりやすく、ピアノという楽器の素晴らしい可能性を感じられるセミナーだったと受講生の方々から嬉しいご感想を沢山いただきました。
受講生の方々はピアノ指導者、ピアノ愛好家、ピアニスト、音大教授...実に幅広く又遠方からも大変多くの方々がお越し下さりました。 質疑応答コーナーでは興味深いご意見を沢山いただき、藤井先生の温かいお人柄が伝わる楽しいトークが続きました。 素晴らしい学びのひとときをご一緒させていただけました事に感謝で一杯です。
次回のセミナーは6月10日。 カワイ表参道パウゼにて開催予定です。 タイトルは「四期の演奏スタイルとピアノの歴史」です。
各時代に合わせた奏法をセレクトするには それぞれの時代のピアノの特徴を知る事も大切です。 プログラムはコンペの課題曲からも選曲させて頂く予定です。
皆様のお越しをお待ちしております。
次回の「藤井一興ピアノ研究セミナーvol.3」は、2016年11月25日カワイ表参道コンサートサロンパウゼにて、バッハ平均律とショパンエチュードの二本立てによるプログラムを、複数回シリーズにてスタート致します。
大変興味深く貴重な機会ですので、是非とも御拝聴頂けましたら幸いでございます。
皆様のお越しをお待ちしております。
Rep:ピティナ世田谷スマイルステーション 代表 三輪昌代
文・山本美芽(音楽ライター・ピアノ教本研究家)
日程:3月3日
会場:カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
メシアンの弟子としても知られる藤井一興先生によるピアノ研究セミナー。藤井先生の愛弟子である三輪昌代先生が代表をつとめる表参道スマイルステーションの主催で行われました。今回は、ショパンのエチュード作品10の6-9番と、それと同じ調のバッハ平均律をあわせて演奏・考察するという大変興味深い取り組みです。
1. 変ホ短調 バッハ平均律BWV853/ 1巻8番 ショパンエチュードop.10-6
2. ハ長調 バッハ平均律BWV870/ 2巻1番 ショパンエチュードop.10-7
3. へ長調 バッハ平均律BWV856/ 1巻11番 ショパンエチュードop.10-8
4. へ短調 バッハ平均律BWV857/ 1巻12番 ショパンエチュードop.10-9
「これは教会音楽ですね」と、まず先生が弾き始めた平均律の変ホ短調のプレリュード。一瞬にしてヨーロッパの荘厳な教会を思わせる響きに、さっと会場の空気が変わりました。これほどまでに素晴らしい曲だっただろうかと、驚きと感動が広がっていきます。
まず平均律1巻のes mollは、プレリュードはes mollですが、ヘンレ版のフーガはdis moll。藤井先生はこの異名同音を弾きわけられました。聴きわけは難しかったものの、シャープ系dis mollのほうがキラキラした音色。♭系のes mollは、やわらかい音色だった気がします。同じ調のショパンエチュード10の6es mollは、時の宿命を哲学的に受け止めるような曲。長三和音といえば明るいと思いがちですが、ここでは長三和音が悲しみを表現している、そんなお話もありました。
次にハ長調、2巻の1番のプレリュードは「絢爛豪華なカテドラルのようですね」といいながら演奏があり、一気に頭のなかがヨーロッパの教会に。楽譜のなかに途中出てくる4度や半音階進行などが教会の建物のパーツのように見えてきます。藤井先生が長く滞在していたパリで、サントシャペル寺院などのステンドグラスからの光を音色にたとえたお話、ルイ13世からさらにさかのぼったアンリ4世時代のフランス、バッハのいたドイツは、どちらもイタリアの様式や装飾からの影響を受けていた話もありました。
フーガは「清楚」というキーワード。先生のなにげない一言がどんどん想像力を広げてくれます。
へ長調の平均律は1巻11番。「イタリア風、アラベスクが入ったプレリュードです」なるほど、イタリアンコンチェルトに似ている感じがしますが、やはりイタリア風というのがひとつバッハの引き出しとしてあるわけです。へ長調のショパンの練習曲は作品10?8。流麗で美しく、安定して弾いていく藤井先生のスーパー・テクニックには舌を巻くばかり。もしかして簡単な曲だったんだろうかと錯覚しそうになります。左手のリズムを踊りのように感じて弾くことが大切。また、右手の16分音符の「4321」の指で弾くときの「32」の音は「団子になりやすい」、音と音がくっつきやすいそう。このふたつの音のタッチをはっきりさせると「可愛らしくなります」。はっきりしない例と弾きわけてくださるのと聴くと、確かに、32がはっきりしていると、可愛い感じがします。
つねに素敵な音楽のためにテクニックやペダリングや指の形があることに感動します。また、この曲では4拍目から1拍目に入るときに100分の1秒ぐらい間をあけるというお話で、確かにそれがあると歌いやすく自然に聞こえました。
最後はへ短調。1巻12番のフーガは、休符が立体感をつくるための重要な役割を果たしているお話がありました。そこに注意して先生の演奏聴くとまさにその通り。100分の1秒の話もそうですが、あらゆる場面に応用できる重要な知識です。
どこの曲でも触れていたのが、ショパンは半音階の使い方や、和音を美しく響かるための配置など、多くのことをバッハから学んでいるということ。それが自然に楽曲のなかに出ている様子を、ひとつひとつ演奏を聴きながら音で確認していくと、決して難しくはありませんでした。
藤井先生が弾くバッハのフーガは、澄んだペダリングが非常に美しく、ひとつひとつの声部を自然な歌のように浮かび上がらせていました。最前列で見ていても、ペダリングは細かすぎてすべての足の動きと指の動きまでは理解できませんでしたが、これは収録されたビデオを何度も見直せばわかるかもしれません。もっともっと先生の音を聴きながらペダリングをよく見ていたいという思いが残りました。
毎回藤井先生の講座で感じることですが、曲を理解するための理論は、机上の空論ではなく、実際の音、鳴り響く演奏への感動があって、はじめて必要性や意味がいきいきと伝わります。やはり指導者としては、生徒さんには実際の音を通して美しさを感じてもらい、そのうえで理論も説明できたら理想的だと感じました。
★次回のセミナーのご案内★
次回、表参道スマイルステーションによる藤井先生のセミナー
「藤井一興ピアノ研究セミナーVOL.5 調性による色彩とファンタジー3」
2017.11.17(金)
表参道カワイサロン パウゼにて10時半-12時半
ショパンエチュードとバッハの平均律の続きをとりあげる予定です。
この日の講座はプロのカメラマンによってDVD収録されています。
2017年 4月半ばごろに完成の予定です。
限定枚数にて只今、御予約受けたまわり中です。
ご希望の方は表参道スマイルステーションにご連絡いただくか
090-5309-2076
こちらにメッセージ頂けますと幸いです。
olivier.messiaen1908-1992@jcom.home.ne.jp
日時 2017年11月17日(金)10:30-12:30
会場 カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
主催 ピティナ表参道スマイルステーション
代表:三輪昌代
レポート:山本美芽(音楽ライター)
《バッハ平均律第1巻17番変イ長調BWV862》
《ショパンエチュード変イ長調op.10-10》
《 バッハ平均律第1巻7番変ホ長調BWV852》
《 バッハ平均律第2巻第7番変ホ長調BWV876》
《ショパンエチュード変ホ長調op.10-11》
ショパンがパリに出る前に書いた作品10の練習曲を見ると、バッハの平均律との共通点がさまざまに浮かび上がり、ショパンがバッハを研究していたことが推測されます。 表参道スマイルステーション主催のこのセミナーシリーズは、この視点から、同じ調のショパンエチュードとバッハ平均律を演奏しながら考えていく興味深いものです。今回はフラット系の変ホ長調、変イ長調の曲がテーマでした。
今回演奏された曲は、どれもエチュードや平均律のなかでも比較的難しい部類に属し、学習順序としてはあとになってしまいがちで「大変そう」というイメージもありますが、藤井先生が弾き始めると、あまりに美しい世界が広がり、まさに驚きの連続でした。
「初冬のこんな天気のいい日には、教会のカテドラルにあるステンドグラスに光が入って、そこでパイプオルガンの音が鳴り響くと、なんともいえないんですね」とのお話から始まった1巻のプレリュード7番。長く伸ばす音符がたくさんあり、オルガンのようなイメージとのこと。ペダルを細かく踏みながら、藤井先生はまるでオルガンのように持続音で声部を描き分けていきます。
また、藤井先生は、調性や、音階や和音の第何音が使われているのか、大事な音の和声的な意味合いをわかりやすく指摘されました。1巻7番のフーガの冒頭テーマが「属音から始まり」、真ん中の声部の「テーマは主音から始まる」といった具合です。そしてショパンエチュードの作品10の11、こちらも変ホ長調ですが、アルペジオで「パララン」とハープのように弾く和音が終始連続する曲。和音のなかでそれぞれの音のバランスをどのようにとるのか、特に内声の出し方がポイントということです。そこではどの指を中心に動くか、いつどの指をすばやくどけるのか、手首の使い方など、さまざまな技術的な要素もお話がありました。
ショパンはフラット系の調で、曲をたくさん残しています。同じフラット系の調でも「英雄ポロネーズ」などの作品もあり雄大な広がりを感じさせる変ホ長調と、高貴さのある変イ長調ではまた色合いが違うものです。平均律1巻17番のプレリュードではヘミオラについて、フーガでは4度あがって2度下がる音型を多用、ミクソリディア旋法が出てくることなどアナリーゼ面を中心に。同じく変イ長調のショパン練習曲作品10の10では、手の中心の軸などの技術面についての解説とあわせて、ラヴェルやドビュッシーを先取りしたような側面についてもお話がありました。
演奏にあたって、藤井先生はショパンはエキエル版、バッハはヘンレ版を使っていました。参加者から、平均律のなかで版によって違う音については、どのように考えたらいいのかという質問がありました。藤井先生は、ヘンレ版でも先生が子どもの頃に使っていたヘンレ版と現在では音が違う、作曲者自身も音を二通り書いている場合などは、作曲者が亡くなっていたら「本当はどちらなのか」と確認することもできない。1音の違いは大きいけれども、そこよりももっと深いところ、大きなところにを大切にしたほうが良いのではないかというお話をされました。
学習課題である以前に、最高の音楽作品としてショパンとバッハを味わう。その感動とともに、藤井先生の驚異的な無駄のないテクニック、そして楽譜を見る眼に触れることができる、素晴らしい時間となりました。
次回の藤井先生セミナーは4月27日、藤井先生が翻訳を手掛けたピュイグ・ロジェのテクニックなども取り入れ、レッスンで取り入れていくための効果的な練習方法についてもお話いただくそうです。
このセミナーがDVDで販売される予定です。DVDのお申し込み先は ピティナ表参道スマイルステーション三輪宛にメールかお電話にてお問い合わせいただけますようによろしくお願い致します。
◆メールアドレス:olivier.messiaen1908-1992@jcom.home.ne.jp
◆電話:090-5309-2076
1976年 オリヴィエ・メシアン国際コンクール第 2 位( 1 位なし)
1979年 パリのブラジル・ピアノ曲コンクール第 1 位
1980年 クロード・カーン国際コンクール第 1 位
モンツァ"リサ・サラ・ガロ"国際コンクール第 1 位
第1回日本国際ピアノ・コンクール第 4 位( 1 位と 3 位なし)
1981年 マリア・カナルス国際コンクール第 2 位( 1 位なし)
及びスペイン音楽賞
サンジェルマン・アン・レイエ市
現代音楽国際ピアノ・コンクール第 1 位
1982年 パロマ・オシェア サンタンデール国際ピアノコンクール入賞
第 3 回グローバル音楽奨励賞
第 10 回京都音楽賞実践部門賞
大型連休もいよいよラスト近くになって参りましたね。 皆さまに於かれましては素晴らしいひとときをお過ごしの事と存じます。 5月24日。表参道カワイパウぜにて 「藤井一興ピアノ研究セミナーvol.8 バッハ平均律.ショパンエチュード全曲シリーズ. 調性による色彩とファンタジー⑥」が開催されます。 バッハを敬愛していたショパンは平均律クラヴィーア曲集から多大なる影響を受け、生涯のバイブルとして携えながら演奏、作曲活動を全うしました。 この度のセミナーではバッハ平均律とショパンエチュード全曲を調性毎に取り上げます。調性や転調、エンハーモニックなどによる相互関係や多彩な響きを理解しながら学ぶ事でより豊かな演奏表現や指導アプローチに繋がります事を願っております。 今回のプログラムは イ短調とホ短調です。 1. イ短調... バッハ平均律BWV889(第2巻20番) ショパンエチュードop.25-4、op.25-11 2. ホ短調... バッハ平均律BWV855(第1巻10番)、BWV879(第2巻10番) ショパンエチュードop.25-5 又、ピュイグ.ロジェメソッドによる バッハ、ショパンを演奏する上でテクニックを上達させる練習方法をアプローチさせていただきます。 |
日時 2019年4月19日(金)10:00-13:00
会場 カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
主催 ピティナ表参道スマイルステーション
代表:三輪昌代
4月19日、表参道スマイルステーション主催のコンペ課題曲セミナーが行われました。今回は、ピアニストの藤井一興先生と、藤井先生の愛弟子でありステーション代表でピアニストの三輪昌代先生とのコラボセミナーです。
全3時間に及ぶセミナー、まず最初の2時間は三輪先生の担当。A2級からC級までの課題曲をすべて通し演奏しながらお話がありました。 課題曲の紹介だけでなく、具体的、発展的練習方法の提案があり、コンペ曲の練習を通じて「幼少期から多角的に聴こえ、響きを選択する事の出来る耳を育てる」ために、練習方法やサポートすると良い教本、例えばハノンの何番を具体的に使ったらよいなどについて触れられていました。
さまざまな視点がありましたが、例えば印象に残ったのは4期の様式感の出し方、バロックらしく弾くための具体的なコツ、バロックと古典の違いを明確に出すための視点です。まず三輪先生は、4期を理解するためにはピアノの進化や時代背景を学ぶことも大切なので、生徒さんたちには作曲家の背景や楽器博物館などで当時の楽器を研究することも勧めているそうです。その上で具体的なアドバイスがたくさんありました。ごく一部をご紹介すると、例えばバロックによくあるゼクエンツは、波打つようにならず、段階的に奏でる。
カノンはユニゾンにしてみると型がよく解る。また、鍵盤から指が浮いたようにならないために離鍵の練習例が示され、これは藤井先生直伝の方法に三輪先生がアレンジを加えたものだそうですが、非常に効果が高そう。ぜひ、とり入れたいと感じました。同音連打でレガートをつくるのは難しいものですが、そのときに薄くペダルをふむ「のりペダル」のテクニックのお話も。両手のバランスのとりかたでは「どちらかを出すというより、大切な声部を聴く」という感じ方をするお話もありました。
トリルの指づかいの工夫の実例では、楽譜に書いていない方法の提案があり、確かに弾きやすそうです。「音をなじませる」という言葉も何度も出てきて、目立たせる音となじませる音を感じて表現する力も育てたいと感じました。三輪先生は膨大な課題曲を次々に演奏され、たとえば安倍美穂「試練」では短い曲のなかで驚くほどドラマチックにストーリーが表現されており、ダイナミクスのつけ方や音色の響かせ方が印象に残りました。
藤井先生はD級以上をリサイタル形式で、演奏を中心に少しずつお話も入れた内容でした。シンフォニアより第1番、ベートーヴェンのソナタ1番1楽章、ショパンワルツ49の2、ドビュッシーの亜麻色の乙女、平均律の1巻1番のプレリュード、優しい嘆き、ショパンエチュードよりエオリアンハープ、ドビュッシーのアラベスク第2番、リストの「ため息」、ドビュッシーのエチュード11番...ピアノレッスンの定番曲での豪華すぎるリサイタル的な内容。弾いたあとに演奏のポイントを短くお話になります。邦人作品の彌冨 恵 「水中散歩をしてみたら」では水を思わせるハーモニー、日下部満三「夏の雲」は5度と4度の響きをうまく組み合わせた響きについて、作曲家でもある藤井先生らしい視点でのお話がありました。
「あと4分半あるので」とアンコールとして演奏されたドビュッシー「水の反映」では、藤井先生のタッチが冴え、響きが万華鏡のようにホールに広がり、課題曲もコンクールも忘れ先生の誘う美の世界に浸る時間となりました。
5月24日には、同じ会場のカワイ表参道コンサートサロンパウゼにて、藤井先生のバッハ平均律とショパンエチュード全曲シリーズのレクチャー第6回が開催される予定です。
文・山本美芽(音楽ライター)
日時:2019年5月24日(金)10:30-12:30
会場:カワイ表参道コンサートサロンパウゼ
主催:ピティナ表参道スマイルステーション
代表:三輪昌代
2019年5月24日(金)にカワイ表参道コンサートサロンパウゼにて藤井 一興先生をお招きし、「藤井一興ピアノ研究セミナーvol.8バッハ平均律・ショパンエチュード全曲シリーズ調性による色彩とファンタジー⑥」を開催いたしました。
今回は、下記の2曲を取り上げました。
1. イ短調... バッハ/平均律BWV889(第2巻20番)、ショパン/エチュードop.25-4、op.25-11
2. ホ短調... バッハ/平均律BWV855(第1巻10番)、BWV879(第2巻10番)、ショパン/エチュードop.25-5
バッハを敬愛していたショパンは平均律クラヴィーア曲集から多大なる影響を受け、生涯のバイブルとして演奏し続けていました。バッハ平均律とショパンエチュード全曲を調性毎にとりあげるこのセミナーも6回目。毎回欠かさず受講しているうちに、バッハとショパンの関連が非常に自然なものであり、取り組むべき課題というよりは時代を超越したクラシックのなかの名曲中の名曲として、聞く側もとらえ方が熟成されてきた感じがあります。
今回はイ短調とホ短調。平均律2巻の20番のイ短調は、半音階の下降がとても印象的だというお話から、同じイ短調の「木枯らしのエチュード」も半音階の下降があることへとつながり、こうして比べるとあまりにわかりやすい共通点にため息がでるほどです。フーガはプレリュードとの音色を差をつけて。パイプオルガンにはたくさんの音色がありますが、3声部の弾き分けのイメージで、この箇所は具体的にどの音色で、というお話も弾くときのイメージを豊かにしてくれます。そして藤井先生の弾きはじめた『木枯らし』の輝かしく美しいこと、それはもう衝撃的なものでした。しばらくメモをとるのも忘れて聴き入ってしまいます。途中でレクチャーがあり、どこで音色を変えるのか、または手の小さな日本人ならではの指づかい、ペダリングの工夫、脱力の際に気を付ける手の具体的な箇所なども惜しげなく伝授くださいました。
ホ短調は、まず平均律1巻10番。プレリュードは雨の日に聴いたらぴったりきそうなメランコリックな雰囲気ではじまり、藤井先生の清らかな音色が心に沁みます。そして後半プレストになってからは「天から降ってくるような」という先生の言葉どおりの神々しい美しさ。フーガはやはり下降する半音階から開始。ショパンエチュードの作品10では、小刻みに震わせるような右ペダル、親指の付け根を楽にすること、右手が浮かび上がりながらハーモニー全体が共鳴して聴こえるようなバランスのつくりかたなど、実際の音を聴きながらだと腑に落ちることばかりでした。途中、「人間の声のような」「心にぐさっとくるような」というような藤井先生の何気ない言葉のひとつひとつに先生がフランスで修業し、その後長年探求してきた深いものが感じられます。
楽譜の版についてのお話もありました。藤井先生が子どもの頃に弾いていた版と現代の研究を反映した信頼できる版では、驚くほど音が変わっているものがあるとか。ショパンだけでなく、バッハの平均律でもそうなのだそうです。バッハの中で声部をつなげる真ん中のサスティンペダルの使い方もお話があり、かなり目から鱗の衝撃的なものでした。現代のピアノをうまく使いこなす、最新の楽譜の研究成果を利用する。伝統を受け継ぐことも大切にしながら、自分で判断して歌や響きや流れを作っていく。その様子にじかに触れているうちに、藤井先生がイメージや勉強したことを音にしていくプロセスがちらっと見えたような気もしました。
帰宅してから、この日のお題とは別のバッハのプレリュードを練習していたとき、藤井先生がショパンエチュードでおっしゃっていたことがふと浮かび、それをヒントに弾き方を変えてみたら、「これだ」というバランスで音が出ました。これがピアニストの音に学ぶ本当の意味なのだとため息が出るような経験でした。
この日のセミナーの様子は、DVDに収録されて販売されます。希望者は表参道スマイルステーションまでご連絡ください。
次回藤井先生のセミナーは2020年1月31日(金)、藤井先生の愛弟子の三輪昌代先生によるブルクミュラーコンクールとバッハコンクールの課題曲をレクチャーするセミナーは9月26日(木)、いずれも表参道のカワイコンサートサロンパウゼにて開催の予定です。
文・山本美芽(音楽ライター/ピアノ教本研究家)
秋冬に開催されますコンクールに向け 気持ちも新たに諸々のご準備を
なさっておられます事と存じます。
この度のセミナーでは ブルグミュラーコンクール、バッハコンクールの
課題曲を活用してピアノを弾く為の基礎力を育み、表現をより豊かにする
練習方法をご紹介させて頂きます。
コンクールの課題曲には豊かな学びや 気付きが含まれております。
またこの度、特別ゲストで村井頌子先生によります バロックダンスを実際に
ご覧になって頂きプチ体験を含む素敵なプログラムを予定しております。
〈村井頌子先生プロフィール〉
桐朋学園大学音楽学部ピアノ科、ウィーン国立音楽大学チェンバロ科卒業長年、
桐朋学園大学音楽学部 (チェンバロ、バロックダンス)、昭和音楽大学の講師
として勤務した。全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)正会員。
ニ期会フランス歌曲研究会会員。
バロック音楽の成り立ちや当時の文化などをより具体的に感じ、イメージが膨らむ事で
2Dの音楽が4Dにまで広がり、深く豊かに表現されます事と願っております。
当日のプログラムは以下を予定しております。
Ⅰ [コンクール課題曲解説。 基礎力を上げる練習方法のヒント]
(ブルグミュラーコンクール課題曲より)
1.ヤンキードゥドゥル
2.おほしさま
3.かざぐるま
4バラ色のメヌエット
5.おまつり/バスティン
6.河はよんでる/べアール
7.かわいいおんがくか
8.子守歌/ディアベリ
9.闘牛士/バスティン
10.野ばらによせて/マクダウェル
11.インディアンの踊り/ギロック
12.いろえんぴつ ならんだ/轟 千尋
13.すなおな心/ブルグミュラー
14.アラベスク/ブルグミュラー
15.小さな集会/ブルグミュラー
16.せきれい/ブルグミュラー
17.バラード/ブルグミュラー
18.天使のハーモニー/ブルグミュラー
19.貴婦人の乗馬/ブルグミュラー
20.アジタート/ブルグミュラー
21.夜明けの祈りの鐘/ブルグミュラー
22.大雷雨/ブルグミュラー
23.風の精/ブルグミュラー
(バッハコンクール課題曲より)
1.おいかけっこ/ブレスラウアー
2.さよなら冬さん
3.山のぼり
4.ヘンゼルとグレーテル C dur
5.よぞらにゆれるほし/しもまき やすこ
6.カノン/M.フレ
7.かっこう
8.トロイカ
9.勇敢な騎士/M.フォーゲル
10.バイエルより60番
11.メヌエット/w.Aモーツァルト
12.さあ、のみほしてよ
13.ヘンゼルとグレーテル D dur
14.ミニチュアフーガ2番/ローリー
15.子守歌/キルンベルガー
16.アントレ/L.モーツァルト
17.アレグロ/ラートゲーバー
18.スケルツァンド/スカルラッティ
19.ジーグ/テレマン
20.リゴドン/ウィリアム.バベル
21.古いドイツの踊り
22.アレグロ/C.P.E.バッハ
23.プレリュード/ツィーポリ
Ⅱ [バロックダンス鑑賞。プチ体験] ピアノ/三輪昌代先生 舞踏/村井頌子先生
2019バッハコンクール、ブルグミュラーコンクール課題曲より
1.メヌエットハ長調/ W.Aモーツァルト
2.エントラー a moll/L.モーツァルト
3.ジーグ G dur/テレマン
4.リゴドン a moll/ウィリアム.バベル
Ⅲ [コンクール参加時に備えて生徒さんや保護者の方とのコミュニケーションスキル]
コンクールは 本人。保護者。指導者とのチームワークが大切です。
良い距離感を保ちながら、コンクールに向けての日々を心地良く過ごす為の
コミュニケーションスキルについて御考案させて頂きたいと思います。
お得な事前料金でのお申込みは 9月20日迄のお申込みご決済にて承っております。 http://www.piano.or.jp/seminar/list/smmb_s_info/2018083
どうぞよろしくお願い致します。
「三輪昌代先生.ピティナ.ピアノコンペティション課題曲セミナー」開催のお知らせ。
新年度が始まりましたね。
ピカピカの制服姿の新入生や真新しいスーツの新社会人の方とすれ違う時、清々しい希望の光を感じ気持ちも新たになる今日この頃です。
4月16日、18日。両日とも10時半から12時半にて課題曲セミナーが開催されます。
プログラムはA2級からC級のバッハインヴェンションを除く全55曲を予定しております。
課題曲を活用して 豊かな表現方法のアプローチ方法や基礎力を向上させる為の練習方法などが織り込まれる内容となっております。
会場は横浜港の見える丘公園至近に構える山手サロンです。
都心やJR横浜からもアクセス良く、元町中華街駅からエレベーター直結。徒歩5分に位置しております。
会場詳細
https://www.sugisaka.co.jp/company/yamanotenoie/
生徒さん達と学び多い、幸せなレッスン時間を求めて。
横浜山手サロンにて豊かな学びのひとときをご一緒出来ます時を心待ちにしております。
お申込み詳細
https://seminar.piano.or.jp/detail/10001230
今年もあと1ヶ月半を残すところとなりましたね。
コロナ禍で中断しておりました藤井一興ピアノ研究セミナーが12月9日(金曜日)に表参道カワイパウゼにて約3年振りの開催を予定しております。
バッハ平均律とショパンエチュードを調性毎に学ぶシリーズセミナーです。
今回は異名同音調の貴重なお話が伺える機会となっております。
又こちらのセミナーはDVDの収録も致しますのでご希望の方はお申込みを承っております。
皆様と素晴らしい学びの機会をご一緒させて頂けます事を心待ちにしております。
どうぞよろしくお願い致します。
◆セミナー&DVDお申し込み◆
(メールアドレス)
olivier.messiaen1908-1992#jcom.home.ne.jp ※「#」を「@」に変えて送信ください。
(お電話)
090-5309-2076
(ウェブ申し込み)
https://seminar.piano.or.jp/detail/10002703
ピティナ表参道スマイルステーション
藤井一興ピアノ研究セミナーVOL.10
2022年12月9日。カワイ表参道パウゼにて
藤井一興ピアノ研究セミナーが約3年振りに開催されました。
年末のお忙しいところをお越し頂きました受講生の皆様、
こちらのシリーズセミナーは
バッハ平均律とショパンエチュードを調性毎に学ぶプログラムです
今回はCisDur.DesDur。
FisDur.
♭と♯の違いはどの様に聴こえるか。
感じられるか。
色彩感のバリエーションや表現する為のテクニックなど興味深いテ
安川加寿子先生に才能を見出されオリヴィエ.メシアン。
ピュイグ.ロジェ...
只今アーカイブDVDのリクエストを賜っております。
DVDは高い専門技術をお持ちの業者様にお願いしておりましてカ
ご希望の方は詳細などをお伝えさせて頂きますのでお気軽にメッセ
どうぞよろしくお願い致します。
ピティナ表参道スマイルステーション
olivier.messiaen1908-1992@