汐留1月24日ステップ開催レポート(2016.1.24)
当ステーションの特長でもあるスピネットチェンバロでの参加者は3名、素朴で美しいスピネットチェンバロの音色が会場内に響きわたり、なんとも贅沢な時間でした。
今回は就学前から受験生、音高、音大生、社会人の方まで幅広い世代の参加となり、充実したステップを開催することが出来ました。





2016年1月17日(日)赤坂ベヒシュタイン・センターにて菊池 香緒里先生による「みんなで古楽器を楽しもう!!-チェンバロワンポイントレッスンのお知らせ-」という題で講座が開催されました。
ピティナ汐留チェンバロステーションのステップとの関連企画であり、名称の通りスピネットチェンバロを実際に受講者に弾いて頂くのが目的で、同ステーションのスタッフであるチェンバロ奏者の菊池香緒里が講師を務めました。
13:15からのグループレッスンと14:30からの個人レッスンの構成で、参加者は自由曲を準備しておき、グループ或いは個人どちらかの形態を選択してレッスンを受けます。いずれの場合も、冒頭で楽器の概要が説明され、準備した曲を各参加者が弾き、講師がワンポイントでアドバイスするという流れ。
スピネットチェンバロを弾いた直後に感想を尋ねられた各参加者は、ピアノとの違いを挙げていました。普段弾いている曲であっても、楽器が変われば弾き方も変えなければならない事を受講者は実体験から学んでいました。言い換えると、チェンバロの奏法を必ずしもそのままピアノの奏法にいかせるとも限らず、最後の質疑応答では、具体的にどうしたら良いかとの実践的な質問が受講者から出ていました。
ピアニストと連動して、セミナーの場でピアノ演奏のヒントも今後提案出来ると、普段ピアノを弾いている受講者達にとって説得力がより増すのかもしれないと思いました。
2018年1月6日(土)汐留ベヒシュタインサロンにて今井顕先生をお招きし、「モーツァルトへのレシピ -古典の風格を整えよう Vol.5-」という題で講座が開催されました。
今回は『幻想曲を演出する ‐幻想曲K.397(d-moll)、K.475(c-moll)を題材として‐』というテーマ。 ファンタジー、それはモーツァルトにとってピアノを超えた世界であり、オペラのシーンを思わせる表現でもあること、オペラのセリフの間合いが大切なのと同様に、ピアノでもその間合いを表現していかないといけないこと。
シェイクスピアが、セリフに魂を込めろ!と言ったことが、同じように音に魂を込めろ!という気持ちが大切。
バッハもハイドンもモーツァルトも皆人間の心を持っていた。その心を音楽で表現したい、アナリーゼも規則も大事だが、もっと大切なのは人の心情を表現すること。そして、レオポルド・モーツアルトの言葉として『曲のアフェクトを感じる、それは音楽家の大切な感性』という印象深いお話が前置きにありました。
d-moll幻想曲では、出だしのAndanteには、英語のgoの意味があること。アリアの前の休符、静寂も音楽であること、」低音に見られる下降する音型は地獄に引き摺り下ろされるような恐怖! 逃げ出したい感情、諦め、叫び、、、、、そして穏やかな微笑みのメロディー。 この暗から明への切り替えがまさしく天才モーツァルトであるところ! そしてこの曲は初版譜では第97小節のい音上の七の和音で終わっていた、、そこから先は弟子が書いたのであろう。ただ内田光子氏のCDでは、彼女のオリジナルが付け加えられている。
一方、c-moll幻想曲では、モーツアルト直筆の楽譜を見ながら、c-moll 調号を書き入れながら消した後があること、モーツアルトが書き進んでいくうちに調号を使うことのは実際的でないことに気がついた。なぜならば、すぐに音楽はh-mollに転調していっているので、、、 参考資料として配られた直筆から、モーツアルトが側に居るような不思議な気分に浸った時間でした。
またここでも下降する軸のラインは、ドンジョバンニを思わせる地獄へと向かう恐怖、嵐のような音型に沿う2度音程には痛みが表現されている。対話風の音型にはそれぞれの登場人物の気持ちをいれて、、、など
今井先生の演奏からモーツァルト劇場に誘い込まれたようなセミナー、形にとらわれず、何よりも心で音楽を表現することの大切さを改めて思ったひとときでした。
連休最終日の2018年5月6日(日)汐留ベヒシュタインサロンにて今井顕先生による「古典の風格を整えよう vol.6 -実践編-古典期の課題曲による公開レッスン」セミナーが開催されました。
シリーズ6回目となりました今回は、ピティナピアノコンペティションの課題曲の中から 古典の曲を取り上げて、生徒さんたちにご協力いただき、公開レッスン方式で 楽譜の見方、解釈の仕方を紐解いていただきました。
課題曲は以下のとおり
・モーツアルト ソナタ変ホ長調 KV282 終楽章(C級課題曲)
・ハイドン ソナタHob.XI:34 第一楽章(D級課題曲)
・ベートーヴェン 「水車小屋の娘」のアリアによる9つの変奏曲WoO69(D級課題曲)
・モーツアルト ソナタ変ホ長調 KV282 第一楽章(E級課題曲)
・ベートーヴェン ソナタ第21番Op.53 第一楽章 「ワルトシュタイン」
配布資料として、『レーオポルトが息子ヴォルフガングに教えたに違いないこと』 と、D級課題曲のベートーヴェンのヘンレ版と春秋社版のコピーが配られました。
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古典曲を弾く上での基本となる強弱のこと、拍のこと、スタッカートのことなど 楽譜の中から拾い上げて、一つ一つ丁寧に解説していただきました。 楽譜上の音符や符点などのリズム、速度記号などの音楽用語を、当時の文化、社会 また、作曲家の背景などを 時にはウイットに富んだエピソードで、わかりやすく教えていただき 曲のイメージを掴みやすいレッスンとなりました。
どの曲でも共通して私たちが陥りやすい事例として スタッカートや速いパッセージに多く見られる 『音の粒を揃える』ことに特化しすぎて無機質な音楽になってしまうということ それは日本語の発音にも関係があるそうで、スタッカートは『表情豊か』に、レガートは『大切に』 と捉えて注意深く音を聴きながら弾くこと 全ての音に意味があってそこに拍を感じ大切に心を込めて表現すること そこに散りばめられている音と音の間と空間を感じ取ること どんな気持ちでそれが書かれているのか、なぜその音符が使われているのか、 をいかに汲み取れるかが音楽的なセンスにつながるとのことでした。
また、使用楽譜によって随分と解釈が変わってしまうことも驚きでした。表現は自由といえども 古典の様式をきちんと理解した上で演奏するためには、やはり、原典版の楽譜を使って読み解く力を身につけることが大切だと思いました。 ハイドンに関しては、実はモーツアルトよりとてもロマンティックなのに、表現が乏しい演奏が多いとおっしゃっていたのも印象的です。
次回、10月12日のシリーズ7回目では、このハイドンについての解釈や表現方法を教えていただきます。 今井先生の温かいお人柄とわかりやすく楽しいお話であっという間の2時間、生徒さんたちも、参加者の皆様も とても満足された表情で、次回を予約された方も多かったことが主催側にとって何より嬉しいことでした。 今井先生、ありがとうございました。また10月よろしくお願いいたします。