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2012年10月23日

ぐるぐる連弾 運動会系メドレーだ!2012/10/13,14

事務局企画 ぐるぐる連弾 運動会系メドレーだ! 春畑セロリ編曲

富山にいかわステーションのピアノ指導者7名。
魚津の山中で極秘の特訓を重ねました。走り込み、筋トレ、バトンテクニック。
オリンピックイヤーに、あなたにお届けします。
そんな連弾見たことない!そんな先生見たことない!

動画はこちらから。

ステップ開催記録 2012/10/13,14

 入善コスモホール、富山にいかわステーション、第5回を記念して初の二日開催でステップをむかえました。土曜日82組、日曜日63組のお申し込みをいただき、合計145組がベーゼンドルファー・インペリアルのステージにのぼりました。

 アドバイザーは東京から菊地裕介先生、武田朋枝先生、大阪から辻田裕子先生。

 人前でピアノを弾くのは初めての小学生、およそ20年ぶりでピアノのレッスンを再開した大人の方、受験や各種コンクールのリハーサルと思われる方、連弾やハンドベル、鍵盤ハーモニカのアンサンブルでチャレンジする方、23ステップをこつこつと登っている方、部活動のブラスバンドで鍛えた楽器をピアノとのアンサンブルで聴かせた方。期せずして、いろいろな形態のご参加をいただき、客席でただ聴いているだけでも、とても楽しいステップになりました。

 全国的に権威あるコンクールの課題曲も登場し、真剣にピアノを学んでいる小学生の見事な演奏は聴きごたえがありました。そんな人の後を追いたいと思ったお友達もいるでしょう。

 グランミューズに登場した方は、ハナミズキ、Summer、ベートーヴェンの熱情ソナタ、ブラームスのラプソディ、ショパンのワルツ、モーツァルト4手ソナタ。選曲だけ見ても、それぞれのピアノへの思いがあふれていました。

 毎回楽しみなのは、アドバイザーの先生方の講評です。辻田先生が見事にまとめ役を果たされながら、3人の先生方の個性が光った講評でした。先生方のお話に、胸を熱くして目頭を押さえた方もあったようです。短い時間に先生方の音楽と人生が凝縮されたすばらしい講評だったと思います。ここに書き尽くせませんが、少し記録しておきましょう。

 菊地先生は、ピアニストとして楽譜を読むことの大切さを力説されました。「どうしたら上手に弾けるか教えてほしいと言う人が多いけれど、全ては楽譜に書いてある。楽譜にある文法とマナーを読み取ること。それが見えてくるには、幅広い勉強が必要。その時代の音楽様式、作品の形式の解釈、当時の楽器(今のピアノとは違う)、当時のオーケストレーション(今のオケとも違う)、和声と対位法、作曲理論、当時の社会背景と文化。無知のまま楽譜を見ても何も見えてこない。英会話スクールに行ってネイティブスピーカーの発音を真似しているだけでは、英語は話せないのと同じ。文法を学び、自分の言いたいことがなければ、外国語を話せるようにはならない。それと同じ。」

 武田先生は教師としてのキャリアから、保護者や指導者にむけた熱いメッセージも話されました。「何かと忙しい子供達も、時間は作る物だと思いましょう。少しの時間でも、テクニックを磨くための練習ができる。テクニックがあってこその個性的な演奏となり得る。保護者のみなさんには、本番を終えた子供達を抱きしめてほしい。大変なストレスをうけるのがステージ。なにが起こっても、充分に褒めてあげて。そして生徒にとって、先生というのはとても大切な存在。先生が大好きだという状況が生徒にとってベストです。先生を信じてついて行けるという思いが重要。信頼を築いてほしい。様々な状況の中で、心が折れそうになる時は必ずある。そういうときも、力強く乗り越えて行ってほしい」

 辻田先生は、音楽を表現する場面と人生経験についてもお話くださいました。「中高生くらいになってくると、ただシンプルに楽しいか悲しいかだけの感情だけで曲を弾くことはできなくなる。思春期から大人に向かう時代に、さまざまな挫折や敗北、また失恋や別れを経験するでしょう。そういうつらい思いをすることが、演奏に活きてくることがある。つらいとか、せつないとかの思いが曲の奥底の表現にないと、本当に楽しくて明るい曲であっても演奏できたことにはならない。そして、曲そのものを大切にする気持ちが、作曲家の心に近づき、曲の生命力を知ることになる」

 おそらく、参加者のお手元にとどいたアドバイザー直筆のメッセージには、3人の先生方のさらに熱い思いが書かれていることでしょう。

 トークコンサートを両日一回ずつ開催しました。プログラムは菊地裕介先生によるベートーヴェンの熱情ソナタ。二日間で全楽章を聴くという凝った内容です。
 菊地先生は30代の若さで、クラシックピアノの新約聖書と言われるベートーヴェンの32ソナタ全曲を録音しました。富山県内のホールで録音されたため、数年前には何度も富山に滞在されたそうです。演奏は圧巻のひとこと。トークは少なめで曲を聴くというコンセプトのもと、会場全体が一体となって菊地先生の演奏に聴き入りました。
 演奏修了後は、ホワイエで即席のサイン会と握手会になりました。

 静かに燃える炎を心の奥底に秘めながら、理知的で情も深い。絶妙な安定感のピアノでした。富山でもファンが増えたことと思います。ますます今後の活躍が楽しみですね。

 ワンポイントレッスンは辻田裕子先生です。ステップの課題曲にもなっている連弾曲と、バッハのフランス組曲から。

 辻田先生は、単体の音の出し方と2つ以上の音の連なりの弾き方、次へ次へと歌わせる方法を教えて下さいました。真面目で誠実に弾いているですが、さらに歌わせることがみなさん弱かったようです。そのためには、音の連なりをネックレスにみたてること。ひとつひとつがブツブツと切れないよう、ネックレスの玉が連なっているように。

 さらに腕や手首の使い方を、具体的に教えて下さいました。辻田先生は常に美しい声で歌って教えて下さいますが、音に方向をつけるためには歌うことが必要なようですね。

 ステージでレッスンを受けるのは、見た目よりも大変なことです。辻田先生の魔法の10分間をこれからの演奏に活かしてください。出演された受講生のみなさん、ありがとうございました。

 今年は5回目のステップということで、実施事務局では「ぐるぐる連弾 運動会系メドレーだ!」をスタッフ7名で演奏しました。
 演奏というよりは、運動会なわけですが。その様子はこちらからどうぞ。⇒ぐるぐる連弾 運動会系メドレーだ!

 富山にいかわステーションでステップをはじめて5年。継続表彰ならば5回目のキーホルダーがもらえるところです。今回のステップでは実施事務局スタッフ一同、大変に充実した思いで終わることができました。
 これも参加者のみなさんおひとりおひとりの演奏と、アドバイザーの先生方の熱い思い、後援くださった関係者各位、そして陰で支えてくださる本部スタッフのみなさんのおかげです。

 気軽に最高級のステージを体験できるステップとして、みなさまの音楽生活のささやかなお手伝いができますように、来年もコスモホールでお待ちしております。

 来年はコスモホールが誇るコンディションのスタインウェイ・フルコンサートが登場します。

 お楽しみに。

富山にいかわステーション 代表 畠山美佳子

2012年10月27日

菊地裕介さん学校クラスコンサート

IMG_0893.JPG 2012年10月15日。富山県滑川市立田中小学校。正面玄関には格調高い黒松。豪華な木造校舎の小学校です。蜷川校長先生が出迎えて下さり、1年前から準備してきたコンサートがいよいよ開幕です。いつもの音楽室に菊地裕介さんが登場しました。

 4年生から6年生まで、合計3回のコンサートです。一回が45分。学校の時間割どおりに進みます。

 プログラムはプロコフィエフのバレエ「シンデレラ」より、6つの小品(作品102)。

 このプログラムから、ピアニストの意図がはっきり分かるでしょう。技術的にハードな難曲。しかも6曲とも個性的。お馴染みのシンデレラのお話から、一曲ずつタイトルはついているものの、決して「耳にやさしい分かりやすい」曲ではありません。

 小学生の前で、真剣に本格的な演奏をしようではないか。菊地裕介さんのメッセージがプログラムから伝わります。


 1、シンデレラと王子のワルツ
 2、シンデレラのヴァリエーション
 3、口論
 4、舞踏会へ向かうシンデレラ
 5、ショールの踊り
 6、愛をこめて

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 今日のために式服を着て少し緊張した面持ちの子供達。ピアノを囲んでお行儀よく座ってくれました。スーツを着こなし、おしゃれなブルーの靴でさっそうと登場した菊地さん。少し照れくさそうに「こんにちは。菊地裕介です。」と簡単な自己紹介でスタートしました。

 教室に貼ってあった年表の右はじの方に、プロコフィエフがいましたので、それも眺めながら、わかりやすく時代や社会背景について説明してくれました。また、バレエの情景とエピソードもひとつひとつ解説があります。

 「バレエ音楽は、ゲーム音楽に似てるでしょう。ほら、口論って、けんかのこと。ゲームの戦闘シーンの音楽ってこんなかんじじゃないかな。ゲーム音楽を作る人は、実はバレエの音楽を勉強して、参考にしながら作るんだよ。」

 ドラクエといっしょなんだ!と男の子たちは身を乗り出しました。バレエを習っている女の子もいました。戦闘シーンや一目惚れのシーンなど、わくわくする情景が目に浮かんでいるようでした。


 菊地さんの演奏は全力投球でした。子供達を相手にして、まったく妥協がありません。子供達は、水をうったようにしんと集中して聴いていました。シンプルなめでたしめでたしのおとぎ話ではなく、プロコフィエフの音楽には、政治的な時代背景をもとにして、人間の複雑な感情、心の奥底にある割り切れないもの、単純なハッピーエンドではすまない心理、人間のあり方への問い等が込められています。複雑な和声とリズム、またその逆をねらった単純な音階。プロコフィエフの書法にこめられているメッセージ。菊地さんは、そこまで子供達に伝えようとしました。
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 第6曲、「愛をこめて」は特に菊地さんの思い入れがあるそうです。

「僕はこの曲がいちばん聴いてほしかったのです。この曲があるから、作品102のシンデレラを選んだようなものです。最後にあらわれるハ長調の音階の美しさは、説明がつかないほどです。聴いて下さい。」

 45分間めいっぱいのコンサートの最後は、子供達と菊地さんの共演です。菊地さんのすっきりとしてめりはりのあるピアノの伴奏で、子供達が元気に歌ってくれました。

「歩いていこう」
「Believe」
「この星に生まれて」

 菊地さんはベートーヴェンのソナタ全曲録音を富山県内で行いました。その恩返しになればと、このコンサートをお引き受けくださったそうです。また、シンデレラは来年1月のニューイヤーコンサート東京文化会館小ホールでも弾かれるとのこと。
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 田中小学校のみなさん、学校クラスコンサートを受け入れてくださり、ありがとうございました。校長先生、教頭先生、各学年担任の先生方、細やかなお心使い感謝いたします。

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このコンサートは文化庁の平成24年度次代を担う子どもの文化芸術体験事業です。公演の実施にあたりご尽力いただきました関係各位にお礼申し上げます。

富山にいかわステーション代表 畠山美佳子



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